カフェ・デラ・テラへようこそ

●3つの「つながり」を取り戻す
私たちは危機の時代に生きています。
それは、私たちの生を支える三つの基本的なつながりが失われつつあることを意味しているでしょう。その三つは、どれもSで始まる次の三つの英単語で表されます。
soil 自然とのつながり
soul 魂とのつながり
society 人間同士の社会的なつながり
カフェ・デラ・テラは、この三つのつながりを取り戻すための、エコロジカルでスピリチュアルで社会的なムーブメントです。
●大転換を、ゆっくりと、小さく
危機を越えていくためには大転換が必要です。危機とは、だから、その大転換を成し遂げる好機でもあるのです。まず、一人ひとりの価値観の転換として、暮らし方の見直しとして、そしてその暮らしの舞台である地域での活動として、その大転換は始まるでしょう。
「過剰」から「ちょうどいい」へ、「貪欲」から「足るを知る」へ、「奪い合い」から「分かち合い」へ…。「より速く」「より大きく」「より多く」を旗印に猛進してきた社会に代わる新しい世界の合言葉は、次のSで始まる三つの形容詞となるでしょう。
slow 遅い
small 小さい
simple 質素な

そんな世界を想像し、指し示す、それがカフェ・デラ・テラの役割です。
●昔からお寺はカフェだった!
カフェ・デラ・テラ(Cafe dela terra)とは、イタリア語で「大地のカフェ」という意味ですが、大地のテラはお寺のテラでもあるんです。ま、早い話がダジャレですが、ここにはただならぬ深い意味が込められている。
まず、お寺というものが本来、人間界はもちろん、自然界とも分かちがたく結びついたエコロジー・センターである、という思いがそこに表現されています。また、お寺とは、元来、老若男女が階層や貧富の分け隔てなく、さらには生死の別さえ超えて集い合う場であり、だから、現代風にいえば、カフェのようなものにちがいない、という思いが込められています。
そう、昔からお寺はカフェだったのであり、文化センター、コミュニティ・センター、スピリチュアル・センターでもあったのだ、と思いきって言ってしまいましょう。そしてあとは想像力を羽ばたかせて、お寺とその地域がもつ潜在的な可能性を掘り起こしていくのです。
カフェ・デラ・テラへようこそ。
辻信一(文化人類学者)
